《夢日記》Mr.Dに蝕まれながら

徐々に蝕まれつつ、夢と現実を行き来する日々の記録。

【夢日記】3月28日の夢「卒業式の前日」

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高校の卒業式の前日に、私たちは教室で待機していた。

もちろんクラスメイト全員が椅子に座って待機しているのだけれど、自習の時間というわけでもないので、各々自由に友人とおしゃべりをしている。

そんな中、同じ班の先輩(実際には先輩だがこの夢では同級生という設定らしい)が、班員に聞こえる程度の声でぼそりと呟いた。

 

タ「明日がいよいよ卒業式だが、卒業する前に、ちゃんときめないとな」

私「何を決めるんだ?」

タ「決定の方じゃないぞ。告白を成功させたいんだ」

 

おおおっ、と班員がどよめく。私の隣で算数(数学じゃないところが不思議だが)のノートとにらめっこしていた×山も、ノートから顔を上げてこちらに注目していた。

注目を受けて、先輩は恥ずかしそうに顔をそむける。そんな先輩を、斜め前に座るNという女子生徒(見たことないが、友人らしい)がすかさず弄る。

 

N「ついにかー! もちろんお相手は、いずみん……」

タ「バカ、声がでかい!」

 

私も、いずみちゃんかーと言って、にやっとしてみせた。

隣の席の×山はというと、再びノートとのにらめっこに戻っていた。興味がないのだろうか。

ちらりとノートを覗き見る。男の子と女の子の絵が描かれていた。はて、どこかで見たことがあるような?

 

タ「お前も卒業式の前に、きめとけよ」

 

先輩の声で我に返る。今度は私が注目されているようだ。

よし、ここはひとつ、からかってやろう。

 

私「私もいずみさんに告白するって言ったらどうする?」

 

すると先輩は見るからに慌てだした。え、おまえそういう、とかなんとか呟いている。

過去の夢日記でも語ったが、誤解のないようにもう一度言っておくと、私にそういう趣味はない。

 

いずみさん、と言いながら、私は別の人を思い浮かべていた。いずみちゃんではなく、いずみさん。今はもう連絡を絶った古い友人だ。元気にしているかしら。

私の言い方の違いに気がついたのか、勘の鋭いNがにやりとした。

 

N「そういえば隣のクラスの石山って、下の名前、いずき、だっけ?」

 

そうなのか?

聞き覚えのない名前だったが、どうやら私がその人をいずみさんと呼び間違えたと思ったらしい。いや、そもそも石山さんのことはまったく知らないのだが。

私がいずみちゃん狙いでないと分かり、先輩は安心したようだ。チッ。

 

「あ」

 

思い出した、と、おもわず呟いてしまった。

石山さんのことではない。隣の席でにらめっこしている奴の算数ノートに描かれている絵のことである。

私が急にノートを取り上げたので、×山は驚いていた。しかし返せとは言わない。

 

ちなみにこの、私が×山と呼んでいる隣の席の男子生徒だが、こいつはどこからどう見てもイトウにしか見えなかった。魚ではない。

イトウ、というのは近所に住む同級生だ。同じクラスになったことはあるが、仲が良かったという記憶はない。この夢では仲の良い友人という設定らしいが。

しかしどう見てもイトウである彼のことを、この夢で私は×山と呼んでいた(わけあって一文字伏せている)。×山も中学の同級生だが、こちらも特に親しくはなかった。イトウよりも話したことがないと思う。

 

さて、そんな×山のノートの絵だが、これは過去に×山が描いた(という設定の)絵である。描かれた男女はそれぞれ×山と私をモデルにしていて、絵の上に小さく、2013という文字と2015という文字が書かれていた。

 

×山「この絵を知ってるのか」

私「知っているもなにも、×山が描いた絵じゃないか。2013年と2015年に」

×山「そうなのか!? 記憶にない」

 

描いた本人は覚えていないらしい。

言い合う私たちを見かねた先輩が、どれどれ、と覗いてくる。

 

タ「この2013ってのは覚えてる」

 

まじか。そっちの方が古いのに。

 

タ「そういえば×山、今日の放課後の買い物は俺が行くよ」

×山「ああそうか?」

タ「いつも行かせていてすまない」

 

放課後は毎日×山が買い物に行っていたらしい。先輩が謝ると、×山は笑って、気にしてないと言った。

 

N「それにしても、告白かあ」

 

先輩の恋愛話が未だに気になるようで、Nがぼそりと呟く。

 

N「告白、するかー」

×山「俺もするかー」

私「私もするかー」

タ「お前らそれノリで言ってるだけだろ」

 

タイミングよくツッコミが入り、わはは、と四人で笑った。

 

 -+-+-+-

 

暫く談笑していると、ようやく準備が整ったようで、待機していた私たちは一斉に別の教室へと移動した。

時間はもう放課後に差し掛かっている。普段なら掃除をして、部活に行ったり帰宅したりするような時間だが、今日だけは特別だ。

掃除の前に、儀式がある。

実はこの儀式、入学式の後にも一度受けている。入学直後と卒業直前に、それぞれ神様から能力を授かるのが、この学校のしきたりだった。

一つの教室に、生徒たちが所狭しと詰め込まれていく。

先生の長い説明が終わると、みんな一斉に神に願いだした。欲しい能力を願う者もいれば、そうでない者もいる。

みんな願いを口に出しているため、誰が何を願っているのか筒抜けだった。先輩は告白の成功を祈っていた。×山も何やら大きな声で願っている。後ろの男子生徒がうるせぇ! と叫ぶ。

 

能力を授かるタイミングは、人によって個人差が出る。この場で授かる人もいれば、今日中に授かれない人もいるらしい。

先輩は比較的早かったようで、すでに授かっていた。どんな能力なのだと周りがざわめき出す。

 

タ「えっと、魔法関連のステータスに補正がかかるパッシブスキル?」

 

めっちゃレアなやつだ、と誰かが言った。

でも先輩は確か……

 

「ハズレだねぇ」

 

先輩の後ろにいた老女がそう言った。

そう、このスキル、先輩にとってはハズレである。先輩は騎士を目指しているため、物理関連のステータスは上げているが、魔法は全く上げていないのだ。

鑑定のばあさんが言うならそうなのか、と誰かが言った。

 

「私も入学式の時、似たような感じだったよ」

 

先輩を励まそうと思ってそう言った。入学式でもらったスキルが魔法系だったが、私の成長タイプ(ステータスの上がりやすさなど)が脳筋型だったためにお蔵入りとなった、という記憶があった。

すると老女が、ふむ、と言って私を見る。

 

「そんなことなさそうじゃが」

「え」

 

意図せず嘘つきになってしまい、恥ずかしかった。

 

 -+-+-+-

 

買い物に行くと言って校舎を出て行った先輩と別れ、私とNと×山は掃除場所に向かう。

途中、門の前で他学年の生徒たちが募金をしていた。儀式を終えた三年生と募金をお願いする下級生とで門の前はごった返していて、まるで大学のサークル勧誘のようだと思った。

Nは500円玉を取り出したが、私は財布を持っていなかったので募金することができなかった。募金箱を持った下級生の前を、頭を下げて通る。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

ふと後ろを見ると、×山が大金を入れていた。そんなの一体どこから、と驚いていると、お金関連のスキルを授かったのだ、と言われる。

 

私「金持ちか、いいですね」

×山「お前の分まで入れてやったぞ」

私「は?」

 

感謝しろ、と言われて、思わず声が出てしまった。何を言っているんだこいつは、と思った。

 

N「金持ちになったの?」

×山「そうだ。彼女にしてやってもいいぞ」

N「マジ?」

 

Nは満更でもなさそうだったが、私は性格の変化についていけず、眉をひそめた。

Nの肩を抱きながら、お前もどうだと問いかけてくる×山。ついに我慢の限界が来て、もういい、と言って一人で教室に向かった。

お金を持ってしまうとこうも変わるのか。

仲が良かっただけに、悲しみが拭えなかった。

 

 -+-+-+-

 

教室の前の廊下が私の掃除場所だ。廊下を箒で掃きながら、ちらりと窓に目をやる。

儀式に結構時間を使ったのか、外はすでに暗くなり始めていた。窓から見える向かいの校舎の教室にも、ぼちぼち明かりが付きはじめている。その中のひとつに、私の部活の部室もあった。

後輩から、今日の放課後、部室に来てほしいと言われていた。卒業祝いになにか考えてくれているらしい。

早めに終わらせて向かおう、と箒を握り直した時だった。

右手が急に冷たくなり、痺れてきた。何故かつけていた軍手を外すと、手首から上が紫色に変色した右手が現れる。

焦りと同時にステータスが開かれた。スキル発動欄に毒耐性のスキルが点滅しているのを見て、ああこれは、と理解する。

珍しいパターンだが、スキルの習得時、そのスキルのレアリティが高いと、持ち主に危険が及ぶことがあるらしい。このことは一部で、神からの試練だと言われていた。持ち主にこのスキルを使いこなせるだけの技量があるかどうかが試されている、と言うのだ。

期待に胸が高鳴る。強いスキルかもしれない。

 

近くの水道でお湯を出し、右手を温めた。しばらくして色が落ち着いてくる。しかし手の冷たさは良くならない。

試練を乗り越えられなかったのかと不安になり始めてきたその時、ようやく毒耐性のスキルがオフになった。同時に、スキルを習得したことがわかる。

なんと二つも習得していた。こんなこともあるのかと驚きつつ、スキルを確認しようとして、

 

 

目が覚めた。右手が異様に冷たい。見ると右手だけが布団の上に出ている。

厚みのある布団のせいで肩より高い位置に手が置かれていたため、十分に血が通っていなかったらしい。

右手が痺れる感覚を徐々に認識しながら、まだ見ぬレアスキルに思いを馳せた。